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今昔紫紺蹴球記 第2回 永友洋司さん(VOL.3)

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今昔紫紺蹴球記 第2回 永友洋司さん
(1992年度主将 現キヤノンイーグルス監督)


<プロフィール>
大学時代はプレースキッカーも務め、その右足でチームを幾度も勝利へ導いた。卒業後はサントリーで中心選手として活躍、日本代表にも選出された(Cap8)。2002年に現役を引退し、現在はトップリーグ・キヤノンイーグルスで指揮を振るう。


明治大学ラグビー部OBの方々に、当時の貴重な写真とともに、学生生活の思い出や、さらにはラグビー部への思いを語っていただきながら、ラグビー部の歴史を回顧する連載企画。今回は90年代前半に明治のスクラムハーフとして活躍され、現在はトップリーグのキヤノンイーグルスで監督を務める永友洋司さんに、明早戦の思い出や今年の明治の印象などを伺いました。

特別な感情が沸き起こった人生初の明早戦

はじめて明早戦に出場したのが2年生のときでした。中学時代からあこがれていた、あの舞台に立てるかと思うと、前日は興奮して、なかなか寝つけませんでしたね。深夜に寮の屋上で夜風に当たったり(笑)。
ゲーム自体は、最後に早稲田に追いつかれて引き分け( 24‐ 24)。最初から大舞台独特の雰囲気にのまれてしまった部分はありましたね。グラウンドに出ていった瞬間、あまりの観客の多さに圧倒されましたから。明治がリードする展開ではあったのですが、ゲーム自体の流れは早稲田に傾いている時間が多く、特に終盤の猛攻はすごかった。明治は球出しが遅れて、FWが前に出られませんでしたし、僕自身もスクラムハーフとしてうまくボールをさばけませんでした。日本代表のゲームもそうですが、舞台が大きくなればなるほど、どれだけ基本的なことができるかが大事になってくる。特に最後の今泉清さんのトライは、僕がバッキングアップで追いつけなかった。コース取りも悪かったですしね。今でも悔しいですし、忘れられないゲームです。

早稲田がいるから明治がいる

早稲田は、明治にとって特別な存在です。僕は早稲田をすごくリスペクトしていますし、本当に好きなチーム。個人的には明治のスタイルで挑みたいという気持ちが強かったので、明治に入学しましたけど、やっぱりなくてはならない相手ですよね。早稲田がいるから明治がいるのだと、本当に思います。
ラグビーは番狂わせの少ないスポーツ。だからこそ、メンタルの強さが要求されます。我々の時代は毎年、明治が優勢で早稲田がどれだけ食らいつけるかという下馬評でした。でも終わってみれば、10点差以内のゲームがほとんど。それはお互いのお互いに対する想いの表れですよね。練習してきたことが、負けたくない気持ちやリスペクトの気持ちと重なってプレーに出る。だから基本的なプレーを繰り返し練習して、精度を高めていくことが勝利への近道。練習でできないことは、試合でもできませんから。そういう意味で言うと、明早戦は練習でやったことをチームとして100パーセント体現できる試合なのだと思います。
ただ近年の大学ラグビーの勢力図は変わってきています。今も明早戦にかける気持ちは変わらないと思いますが、そこだけにフォーカスできないことも事実です。

「前へ」という伝統を貫けるか

今年のチームは、私が監督を務めるキヤノンに出稽古に来ています。最近の若い選手は、本当にスキルが高くて、感心します。でも私が重視するのはラグビーに取り組む「姿勢」です。先ほども言いましたが、練習でやったことをゲームですべて出しきることが大事なのです。その意味では、今年の明治はいいですね。練習に一生懸命取り組んでいました。この姿勢があれば、結果はおのずとついてくると感じています。
吉田監督の目指すラグビーも、伝統の「前へ」がベースにあると思います。今年だけ勝つのではなく、明治は勝ち続けなければならないチーム。明確なビジョンを持つことが、常勝明治復活のカギになるでしょうね。
僕はOBとして、もちろん明治の勝利を願っていますが、ひとつだけ明早戦に出場する全選手に意識してほしいことがあります。それは、2019年の日本開催のワールドカップに向けて、ファンや子どもたちにラグビーのすばらしさを伝えてほしいということ。多くの関心を集める大舞台ですから、勝利だけにこだわらず、ファンを引きつけるプレーを見せてほしい。将来の日本ラグビーのためにという意識を持ってゲームに臨んでもらいたいですね。期待しています。